海外に滞在して
私は現在クアラルンプールに滞在しています。ここで普通のマレーシア国民と同じように日常生活を営むことで様々なことを教えられます。
Grab CarやUberが一例として挙げられます。マレーシアは車社会であり、公共交通機関が日本ほど発達していません。クアラルンプール市内の中心はモノレールやLRTなど各種鉄道が通っており、比較的便利ですが一歩郊外に足を運ぶと電車がなかなかこない、バス待ちに数十分かかるといったことが多々あります。
急がないときは待つことも可能ですが、用事があったり天気が急変したりといった際に早く目的地につきたいこともあります。
今まではタクシーが市民の足として多く使われていましたが最近ではGrab Carなどの配車サービスが広く受け入れられています。
アプリをダウンロードし、電話番号などを登録するとすぐに使えるようになり、あとはアプリの地図上で行き先と出発する場所を指定するだけです。料金が明確でドライバーはすぐに来てくれるというお手軽さであるため、現在利用者が急増しています。
マレーシアのタクシーを利用するのはマレーシア国民にとってもなかなか大変なもので、メーターを使わず交渉をしないといけない、交通渋滞などで行き先によってはドライバーが嫌がるといったことがあるためです。
こうした手間がなくなるのは配車サービス利用者にとっては願ったり叶ったりのこととなります。
近年GoogleやNetflixといった、人工知能や情報技術を基盤とした産業が大きな躍進を見せていますが配車サービスもまたそうした潮流とうまく合致したものです。
情報のやりとりを自動化させ、地図情報などで目的地へのルートを最適化することでコストを削減し、結果として格安料金を利用者に提供する。そしてもう一つ、タクシーを利用する際の交渉やタクシー待ちといった手間を取り除くこと、これら二つが配車サービスの強みであり結果として利用者のさらなる増加や定着に繋がっていると思います。
これに対して旧来のやり方をずっと続け、未だに交渉が必要なタクシーの利用者は年々減少しています。その背景にはコストと煩わしさがあり、これらを解消しない限り苦しい状況はずっと続くでしょう。
財やサービスが自由に取引される自由市場経済の下ではこうした競争が常に起こり、新しい産業が古い産業にとって変わりますが、あまりにも急な発展は旧来の産業に従事して来た人々をおいてきぼりにしてしまうことがあり、これに対して規制をすることがよくあります。資格や認可といった参入の障壁を設けたりすることはよく見られますが、日本ではまだまだUberなどの配車サービスは認可が下りづらい状況です。
配車サービスとタクシー業界の関係から新技術を使った産業と古い産業の競争や、規制を緩和するべきかといった問題を再考する必要性を教えられた気がします。
個人的には現在私たちは人工知能や情報技術を使うことは配車サービスのみならず例えば中国のアリペイ(日常生活におけるほぼ全ての支払いが可能な電子マネー)など色々な産業により広く、より深く浸透していく時代の一番初期に生きていると思っています。